またまた中3生Kさんからの質問です。Kさんは下に示す質問文Qに対してA1 のように答えたのですが、先生(T)はそれではダメで、A2が正解だというのだそうです。「どうしてA1ではダメなのでしょうか?」というのがKさんの質問です。
Q: Why do you like the subject?(どうしてその教科が好きなのですか。)
A1 (K): Because I like drawing.(絵をかくのが好きだからです。)
A2 (T): Because I like drawing, I like the subject. (絵をかくのが好きなので、その教科が好きです。)
注:「絵をかく」というのは「色を使わないで絵をかく」という意味です。線画です。
私の考えではKさんの答えが正しく、Tさんの答えは少しヘンだと思います。Tさんの答えのどこがヘンなのでしょう?
Tさんの答え Because I like drawing, I like the subject. は前半(理由を述べている Because . . .の部分)と後半(結論を述べている I like . . . の部分)に分かれます。Why do you like the subject? への回答は前半の部分で終っています。後半部分はいらないような気がします。しかも、like the subject は質問文の一部を繰り返しているに過ぎません。
おおまかな言い方をすると、A2の前半部は新しい情報(絵をかくのが好きなので)を含んでいます。これに対して、後半部は古い情報(like the subject)を繰り返しています。ここでは新しい情報と古い情報を並べる順序が問題なのです。英語ではふつう、古い情報が先で、新しい情報はできるだけ文の後半にもってきます。しかし、A2では「新情報→旧情報」の順になっているのでヘンなのです。ですから、A2の文は次のように修正すれば少し改善されるかもしれません。
I like the subject because I like drawing.
それでも、I like the subject の部分は不要だというネイティブスピーカーは少なくないと思います。新情報の Because I like drawing. だけ答えれば充分だと考えるからです。
最後に(これは私の想像ですが)、Tさんが Kさんの Because I like drawing. はダメと言った裏には、従属節(この場合、because 節)だけで答えるのは「略した言い方」で「正式な言い方」ではないという考えがあるのかもしれません。日本では、伝統的な英語の先生はそういう教え方をしてきました。例えば、
Who went to Tokyo with Mr. Johnson this morning?
という問いに対する答えが Mary であった場合、その答えは
Mary went to Tokyo with Mr. Johnson thismorning.
でなければならない、とするような考え方です。しかし、このような考えはある意味で間違っています。つまり、英語には文(シンタックス)に関する規則のほかに談話に関する規則というものもあるからです。Mary went to Tokyo with Mr. Johnson this morning は文の規則という観点から見れば全く問題はありません。しかし、ふつう英語ではそのようには言わず Mary did. と答えます。質問にあった Tokyo with Mr. Johnson this morning の部分は繰り返さないのが英語の談話の規則(コミュニケーション場面でどう言うか、に関する規則)だからです。
「文法的に正しい文をつくる」ことと「英語として適切な表現をする」ことは別物だということです。